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てげてげブログ
2012-08-06

421) 愛すべき同室者

  8日間の入院。病室は高齢者ばかりの4人部屋だった。結構入れ替わりが激しくて、私の入院中にも2人が退院していった。退院したらその日のうちに新しい患者が入院してきた。他の病室も含めて、ほとんど空きベッドはないようだった。

  同室で8日間を一緒に過ごしたA氏のことである。A氏が発する各種の音声について触れてみたい。病室の中は静かなものであった。A氏以外の入院患者はほとんど何の物音も発生させない。その中でA氏だけが遠慮会釈なく、傍若無人に色々な音を発生させるのである。大人しい同室者は苦情を言うこともなく、ただじっとそれに耐えていた。

〇うめき声、ため息(痛いから発するとか苦しいから発するうめき声やため息とは、質が違っていた。発せられるタイミングからしても、周囲に聞かせてやりたいという気持ちがこもっていた。)
〇独り言、寝言(大きな声で〇〇ちゃん・・・とか、△△ちゃん・・・とか、その他いろんなことをのたまう。独り言なのか寝言なのかは正体不明だった。)
〇いびき( だけは他の音声に比べて、おとなしい音だった。唯一の救いだった。)
〇歌声(病室内で、歌謡曲まで披露してくれるサービス精神旺盛なご仁であった。)
〇携帯電話の会話(プライベートのこと、仕事のこと、周囲にお構いなし。その生活ぶりや家族状況までが、否応なく耳に飛び込んでくる。皮肉にも当人の声がまたよく響くいい声なのである。)
〇看護師への指示や依頼(四六時中、大きな声で何やかや言いつけていた。)
〇おならの連発(ブオーッ、ブオーッと音高らかに連発する。私はあんな大きなおならをいまだ発したことがない。強烈な臭いが襲ってこなかったのが幸いだった)

  人は周囲に気を使い、色んなことを気にしながら生きている。そんなことを気に病まなくてもいいじゃないか、と思えるような些細なことに悩んで死を選ぶ人もいる。一方で、60年をはるかに超える人生を、世の中に吾一人しかおらぬかの如くに無遠慮に生きてこれた人もいる。
  周囲を気にすることなく、あんなにも傍若無人にふるまえる、A氏に一面の羨ましさを感じたものである。(2012.08.06)

  

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