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てげてげブログ
2010-07-27

187)「永遠の0」 2010.7.27

  昼休み、近くの本屋を覘いた。ふと平積みにされた『永遠の0』という文庫本の山が目に付いた。聞いたこともない書名だし、作者も百田尚樹と全く知らない名前である。
  帯に表示された『最高に面白い本大賞』という文字と、俳優ながらもよく小説の書評を書いている児玉清氏絶賛というPR文だけを頼りに購入してきた。実に面白かった。分厚い文庫本だが最初から最後まで退屈するところがなかった。

  物語は6年前の祖母の死に始まる。祖母の死後、祖父から突然、思いがけず、お前達は血の繋がった私の本当の孫ではない、お前達の本当の祖父は宮部久蔵という、終戦の数日前に神風特攻隊の一員として亡くなった男だ、と聞かされる。

  4回も司法試験に落第して、目標を見失いつつある健太郎と、その姉、フリーライターの慶子が、二人して戦友会を足がかりにしながら、生き残った、祖父の戦友のもとを訪ねて回る。その聞き語りで物語が綴られてゆく。

  時に臆病者だったと悪口を言う戦友もいたが、様々な戦友たちの証言から、次第に祖父の生き様や人間性、真の姿が明らかになっていく。
  同時に戦友たちの話の中には、太平洋戦争の経過や実態、自らを安全な場に置いたエリート将校たちの無責任な作戦計画や兵隊の命を道具のように軽んずる有様、理不尽さを感じながらも黙って命令に従うしかない軍隊組織の様子なども随所に語られていて、あたかも歴史書を読んでいるようでもある。
  また戦闘機同士の空中戦の描写は迫力満点、まるで自分が戦闘機に乗って戦っているような、そんな気分にさせてくれる。
  それにしてもやむなく特攻隊に志願した二十歳そこそこの多数の若者達が、そこに追い込まれていった心の動きには胸の塞がる思いがした。
  そして二人が最後に辿りついたのが、血の繋がりがないというその祖父自身であった。そこには驚くべき大どんでん返しが待っていた。

  作者はこれがデビュー作だという。物書きで飯を食おうとする人は、やはりたいしたものだと感心する。これだけのことを調べ、これだけの筋書きを考え、これだけ読ませる文章を書くとは-----。

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